T・Iさん 一橋大学 法学部
<分析>
高校入学と同時に当学院へ入会したこの生徒は、作文の経験を有しており、文章を書くこと自体に苦手意識はありませんでした。しかし、本人の更なる成長を期して、表面的な記述力ではなく、その根底にある「思考力」を鍛え上げたいという強い動機から、当学院へ門を叩くに至りました。
本人および保護者が共通して認識していた「思考力」における課題は、本人が周囲の大人の言動に対して極めて忠実でありすぎたという点に集約されます。与えられた正解や期待に即応する姿勢が身についていた一方で、提示された事象に対して自らの意志を戦わせ、批判的に吟味し、独自の解を導き出すといった、思考の「闘争」の訓練が決定的に不足していました。学校教育における教科学習の成績は極めて優秀であり、知識の習得においては申し分ない実績を誇りながらも、自律的な思考の構築という一点において、大きな伸び代を残している状態にありました。
<施策>
自らの意志を鍛錬するという主題を掲げ、小論文の研鑽を積むなかで、一つの転機が訪れました。指導の過程において「自分自身の内側にある不満や負の感情もまた、重要な学びの起点となり得る」という対話を重ねた際、本人は堰を切ったかのように、社会に潜む「脱法」行為の問題や、法の支配が及ばない限界領域について熱弁を振るい始めました。
「なぜこのような事象が看過されるのか」という根源的な問いに対し、共に繰り返し探究を深めていくなかで、本人のなかに確固たる「法学研究」への志が芽生えていきました。自身の内なる違和感を単なる感情で終わらせず、法という枠組みを通して論理的に解明しようとする姿勢は、まさに受動的な生徒から自律的な研究者へと変貌を遂げる過程そのものでした。
<効果>
多種多様な法学の論文や先行研究に触れるなかで、本人はまさに水を得た魚のように、自覚的な探究を日々深めていきました。そこには、かつての自らの意志を明示できずにいた姿は影を潜め、確固たる主体的視座を持って学問と対峙する一人の学徒としての姿がありました。
学ぶ勢いは以前とは比較にならぬほど力強さを増し、その知的探求の熱量は周囲を圧倒するまでに至りました。自身の内なる問いと法学という学問領域が有機的に結びついた結果、合格という成果となったと言えます。

