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知名度や憧れで進路選択をすると失速(?)

投稿日時:2026/04/01(水) 17:43



こんにちは、岡本大空です。
新年度になり、新高3生たちはいよいよ志望先を確定します。
当学院の生徒たちは、大学の「知名度」や「憧れ」で志望先を選択しません。
本人が学びたい場所で、学びたい内容を求めて進路選択をします。その結果として、大学側からも高い評価をいただくのですが、ではなぜ、いわゆる「偏差値」や「知名度」で良好とされている大学、いわゆる順位付けをした進路指導や進路選択をしないのか。

これは綺麗ごとや理想論ではなく、知名度や憧れで進路選択をすると、大学入試並びに大学入学後に失速するリスクが高まるからです。そして生徒たちもそれをよく知っているからです。

今回は、経済学と心理学の観点から考えたいと思います。

①プラスとマイナス
これはよく使われる例ですが、学校で教員が「質問がある人いますか?」と聞いても、我先にと次々に質問が出てくることは、ほとんどありません。
私が講演会に行き、司会者の先生が質問を募っても、当然のごとくシーンとなります。一方で、その場でコメントシートを書かせると、300人くらいの講演会ですと、少なくとも100人以上から質問が記載されています。

彼らが手を挙げないのは、質問がないのではなく、経済学における「合理的選択(Rational Choice)」をしているのです。
人間は行動する際、無意識に以下の天秤にかけています。
プラス(益): 手を挙げると、疑問が解消され、知見が広がる。
マイナス(コスト): ずれた質問をすると恥をかくリスク、周囲の視線、心理的負担。

もしこのプラスが1だとしても、本人にとってマイナスが5だとすれば、手を挙げるという行為は「ー4」になります。結果として、静観という「コストを最小化する行動」を選ぶのが人間として合理的な判断になってしまうのです。

②入学後の失速
これを、進路選択に応用してみましょう。
学校や塾が、本人の志向を二の次にして知名度の高い大学を勧めるのは、組織側に「進学実績」という強烈なインセンティブがあるからです。
しかし、心理学の「自己決定理論(Self-Determination Theory)」によれば、報酬や強制といった「外的動機付け」によって選ばされた行動は、長続きしません。

「周囲が勧めたから」「有名な大学だから」という動機で入学した生徒は、大学という自由な環境に放り出された瞬間、自分を動かしていた「外圧」を失い、急激にパフォーマンスを低下させます。

文部科学省の調査結果を紐解くと、大学入学後に待ち受ける「理想と現実の乖離」が浮き彫りになります。

文部科学省「学生の修学状況(中退者・休学者)等に関する調査(令和5年度)」
大学を中退する理由のトップは「転学・進路変更等(22.0%)」、次いで「学生生活不適応・修学意欲低下(16.5%)」となっています。
※休学理由においても「修学意欲低下」は主要な原因の一つとして挙げられています。
※なお、「単位不足」などはこれらより少なく、「学力不振(7.5%)」となっています。

中退者の5人に1人近くが、「学びへの意欲を失った」あるいは「ここは自分の居場所ではない」と感じて大学を去っているのです。これは、進学校や塾が「出口(合格)」だけをゴールに設定し、入学後の「学びの継続性」を軽視してきた結果と言えるでしょう。


③受験期の失速
「入学後のことは、入学してから考えれば良い」という声が聞こえてきそうですが、入学後だけではなく、受験におけるパフォーマンスが落ちるということも確認されています。

人間が「納得感」のない環境に置かれると、脳は冷徹なリソース管理を始めます。具体的には、脳にとってコストばかりが大きく、報酬(喜び)が少ないため、エネルギー消費を抑えるために「パフォーマンスを自動的に引き下げる」という適応現象を起こします。(集中力や記憶力が落ちるなど)

さらに、大学側が求める「志望理由」とは、単なる志望動機ではなく、その生徒の「自己主導性(Self-Agency)」の証明です。内発的な動機がないまま、知名度や周囲の評価を優先して進路を決めた生徒は、自分の中に語るべき「言葉」を持ち合わせていません。そこで、心理的なコストを最小化するために「ネット上の例文」や「合格者の模倣」という安易な選択に走ります。

近年の総合型選抜(旧AO入試)の現場では、アドミッション・ポリシーへの「適合(マッチング)」ではなく、その生徒独自の「問い」があるかどうかが厳格に評価されます。模倣された志望理由書は、面接での深い対話(ディープ・インタビュー)において破綻し、不合格という結果を招きます。

(むすび)
学校や塾が知名度の高い大学を強く勧める背景には、組織側の「実績作り」という経済的・社会的インセンティブが存在します。
そこでは「その大学で何を学ぶか(中身)」よりも、「どの看板を背負わせるか(外見)」が優先されがちです。本来、教育は生徒の「内発的動機」を育む場であるはずが、いつの間にか「偏差値という指標を上げるための作業」にすり替わってしまいます。

これに加え、近年はSNSの影響もあり、周囲の声がノイズとして入ることもありますが、生徒の心が喜ぶような学びは何であるのか。それを丁寧に考えるために、今日も指導に臨みます。
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